棗 part1~利休の美の凝縮
薄茶の点前の時に抹茶を入れる容器ですが、植物のナツメの実に形が似ていることからその名がつきました。
利休刑中棗は、男性の大きな手にも女性の華奢な手にも不思議に馴染む形です。洗練された蓋の甲から、胴への曲線と全体の均整のとれた姿。しかも漆黒。どのような道具と組み合わせても、凛とした品格を保つこの器の相に、利休居士の凝縮された美意識を見ることができます。
塗師中村宗哲家には、棗の型の詳細な部分までを定規する切り型が伝わります。この型は、三百余年の年月を経て塗師の家に連綿と受け継がれています。
(『日本文化の特質』より)
2016年6月