古帛紗と裂地-金襴②-
今月は前回に続き、金襴の裂地を紹介し、その美しさや由来について学びたいと思います。
二人静金襴(ふたりしずかきんらん)
紫色の地に、金糸で一対の鳳凰が向かい合った丸型文様を織り出している。紫は昔は格の高い色とされていたため、この裂地の高貴さ、また年代が古いことなどが伺える。
室町幕府第八代将軍足利義政が、この裂地を使った能衣装を着て「二人静」を舞ったことが由来とされている。大名物北野肩衝茶入、同浅茅肩衝茶入などの仕服に用いられている。(二人静とは、源義経の愛妾・静御前の霊とそれが乗り移った女との相舞が見どころの能舞台。)
角倉金襴(すみのくらきんらん)
金糸で花樹と兎の文様を織り出しており、兎は後ろを向いて片方の前足を上げている。類似の裂地に花兎金襴があるが、角倉金襴の方が花の切り込みが深い、兎の姿がはっきりしている、また前足を上げているといった違いがある。
京都の豪商・角倉了以(すみのくらりょうい)の愛蔵によることが由来とされる。
大名物鎗の鞘肩衝茶入、中興名物思河茶入などの仕服として用いられる。
金地二重蔦大牡丹唐草金襴(かなじふたえづるおおぼたんからくさきんらん)
地色には白、紫、赤、緑と様々ある。地には入子菱文様が織り出され、地色を柄の縁取りとして見せている。二重蔓唐草文の上に大牡丹がまたがるように配置された、他にはない豪奢さと華やかさを備えている。東山御物の表装具にも多く使用されている。
2017年9月