古帛紗と裂地-錦①-
二色以上の色糸を使って文様を織り出した織物を「錦」と呼び、経糸(たていと)で文様と地を織り出す経錦(たてにしき)と、緯糸(ぬきいと)で文様と地を織り出す緯錦(ぬきにしき)とがあります。経糸、もしくは緯糸で文様を織り出すため柄の自由度が高く、色数が多ければ華やかさが増す織物です。また、このような織組織のため生地が厚く比較的どっしりとした質感で、金襴とはまた違った重厚さのある織物です。
獅子狩文錦
ササン朝ペルシャの典型的な文様構成であり、それが日本に伝わった裂地です。連珠で円文を作り、その中に飛びかかる獅子とそれを射ようとするペルシャ騎士が織り出されている、狩猟文の一つです。法隆寺に伝わる国宝「獅子狩文様錦」でもあります。写真はこれをアレンジした古帛紗です。
有栖川錦
文様は一定ではなく様々な動物文、草花文が直線的、かつ幾何学的に配されており、色も鮮やかな裂地です。有栖川宮家伝来が名称の由来とも言われていますが定かではありません。前田家伝来の雲龍文、馬文、鹿文が有名で、写真は鹿文有栖川錦です。
大蔵錦
地に五色の石畳文を織り出し、さらに金糸を加え、法螺貝や瓢箪に波模様を施した文様が上下交互に配してある裂地です。華やかな色使いと、細やかな文様と地織とが合わさった錦の中でも豪華絢爛な裂地の一つです。
2018年6月