~ 一盌からピースフルネスを ~

古帛紗と裂地-錦②-

錦の裂地の第二回目です。今回は三つの裂地をご紹介します。

 

円紋白虎朱雀文錦(えんもんびゃっこすじゃくもんにしき)

先回ご紹介した獅子狩文錦と同じく、ササン朝ペルシャ風の文様です。古代中国の思想に出てくる四神のうち白虎と朱雀が織り出されています。円の中の白い動物が白虎、外側四方に配されているのが朱雀です。四神はそれぞれ守る方角があり、白虎は西方の守護神、朱雀は南方の守護神と信じられていました。

原本は法隆寺に収められているものです。

 

蜀紅錦(しょっこうにしき)

中国・蜀の時代の首都であった成都で製作された錦のことを蜀紅錦と呼び、「蜀江錦」とも表記します。配色・文様に様々なバリエーションがありますが、いずれも格子や亀甲を思わせる直線的な柄や幾何学模様に、花文・七宝文などを配しています。
写真の蜀紅錦は、格子・亀甲の直線の中にさらに一部柄を織り出し、そこに花・七宝・魚などの文様を配しています。左右対称の巧みな構成と豊かな配色が見て取れます。
法隆寺には二種類の蜀紅錦が収められていますが、いずれも地は紅色で一つは写真の裂地のように格子に花文を配したもの、もう一つは幾何学模様となっています。

 

花鳥獅子龍段文錦(かちょうししりゅうだんもんにしき)

幅の異なる段の中に、それぞれ花と鳥、花と獅子、雲と龍、宝物、幾何学模様などを織り出しています。段と段との間には真田風の打ち込みがあり、シンプルな配色の中で目を引く構成となっています。様々な動物が段ごとに描かれていることにより、どこか異国の物語を思わせるような裂地です。

2018年8月