和の文様-波・水-
今回の文様のテーマは「波・水」です。
10月というと日本では秋を迎える頃ですが、ブラジルでは夏の始まりを感じる季節です。
高浜虚子の「水打つて風鈴いまだ鳴かぬなり」という歌にあるように、打ち水や風鈴など日本人の夏の暑さを凌ぐ涼やかな知恵を、ここブラジルでも感じたいものです。「ガラス」を意味する『びいどろ』はポルトガル語から来た言葉ですが、びいどろの器もまた爽涼感のあるアイテムの一つです。
この回では見た目に涼しい波や水といったモチーフの文様を紹介します。
【波文(なみもん)】
寄せては返しうねる波や押し寄せる波頭を文様化したものです。細かく分類すると立浪文や荒波文など様々ありますが、総称として波文と呼ばれます。これは主に波だけの文様ですが、波と共に松や浜辺などを描き風景として表した文様もあります。
【光琳波(こうりんなみ)】
光琳文様の一つで、尾形光琳作「紅白梅図屏風(こうはくばいずびょうぶ)」に描かれた波を元に文様にしたものです。渦を巻いたような波が下へと流れていく様を図案化したもので、独特な曲線が特徴です。
【青海波文(せいがいはもん)】
波を幾何学模様で表した文様です。同心円を重ねていき、見える部分が扇状となり波のように見え、どこまでも続く大海のような文様です。着物の小物や陶器、蒔絵など身近でよく見かける親しみやすい文様です。
【波に千鳥】
字の通り、波間とそこに飛び交う千鳥を表した文様です。ここでいう千鳥は海辺や河辺にいる鳥の総称で、群れを成しているためこの名がつきました。千鳥はふっくらと意匠化されたものが多く、清涼感と共に可愛らしさが際立つ文様です。
【流水文】
水が流れる様子を表した文様で、S字状に曲がりくねっているものや平行線を用いた幾何学的なものまで様々あります。また流水文と共に草花や風景を描き込むことも多いです。
例えば、燕子花(かきつばた)や菖蒲には流水文と八橋が一緒に描かれますし、流水文に楓や紅葉があると「竜田川文(たつたがわもん)」と呼ばれます。(奈良生駒の竜田川が紅葉の名所であるため。)
【観世水文(かんぜみずもん)】
楕円形の流水が渦を巻いたような文様です。能楽の流派の一つである観世家が定式文様として使用したことが名前の由来となっています。
2019年10月