セラードの悠久を憩う茶会
藤本和治
40年間慣れ親しんだサンパウロから首都ブラジリアに移って、もうすぐ3年を迎えようとしています。ブラジリアの気候は、乾季(4月~9月)と雨季(10月~3月)に分かれていて、昨年は乾季の間、120日以上も雨が無く、サンパウロとの気候の違いに驚きました。しかし、10月に入ると、乾季の終わりを告げる待望の雨が降り、乾ききった大地を潤してくれます。それはまた春の訪れを知らせる雨でもあります。ここに住む人々は、毎年この雨を心待ちにします。
さて、ブラジリアに引っ越して直ぐ、林宗円先生からゴヤス州アナポリス市(ブラジリアから南西に約200キロ)でのお茶会のお話しがありました。準備期間は約1年。打合せを重ね、テーマは「春」に決まり、お道具は、大使館からお借りした他、サンパウロから車で搬送しました。
そして迎えた2018年10月12日。アナポリス市郊外にある、陶芸家の本城正行氏邸宅内において、「セラードの悠久を憩う茶会」が開催されました。前夜には、春の訪れを知らせる雨があり、会場は朝から清々しい雰囲気に包まれていました。
この日、ブラジリアからは、山田彰大使ご夫妻とJICAの斉藤顕生所長、サンパウロからは、ブラジル日本移民110周年記念式典委員会の菊池義治実行委員長、裏千家ブラジルセンターの一行(約20名)他、地元の日系人や日本文化に興味を持つ方々等、約120名がご出席下さいました。
木々の間から射し込む陽光、竹の揺れる音、鳥の囀りにつつまれた庭園内には、本席(八畳のゴザ席)、点心席、立礼席が設けられた他、大小様々な生け花(草月流)や陶芸の作品が各所に展示されました。
ブラジリア地区で、このような大掛かりなお茶会が開催されるのは初めてのことでしたが、サンパウロから参加されたある教授の先生は「日本でもなかなか出会えない茶会でした」とご感想を述べられたとのこと。途中、家主が飼育している孔雀が屋根の上に現れるというハプニングにも遭遇。まさに「一期一会」の茶会となり、訪れた方々は、春の訪れを感じつつ日本文化を満喫したご様子でした。また、私にとっては、“もう一度、一からお茶を学びたい”との思いをもたせてくれた行事でもありました。
裏千家ブラジリア地区代表