はじをすて人に物とい習うべし 是ぞ上手の基なりける
昔の言葉に「知らぬ事は知りたる人に問うを恥じず」というのがある。知らぬ事は恥ずかしいと思わず、師匠や先輩に質問すればよい。「ここのところがわからない。次の稽古日には、先生に聞いてみよう」と思っていながら、さて師匠の前に出ると、「このくらいのことがわからないか、と笑われないだろうか。他の稽古の人たちもおられることだし」と、口まで出かけていた質問も、そのまま聞かずにほっておく。
なるほど恥ずかしいと思うかもしれない。しかし機会を逃してしまうと、知りたいことも、そのままになってしまう。これは大きな損失である。
その反対に一時の恥ずかしささえ忍べば、それが一生の得になるのである。
このことと逆に、知ったかぶりの顔をしている人がある。中には知っているような顔をして、他人から探り聞きをしようとする人があるが、これはもっとも卑しい心である。
2015年7月