何にても道具扱うたびごとに 取る手は軽く置く手重かれ
点前には、運び点前と棚物点前とがあります。運び点前は、風炉・釜だけが最初から据えてあって、水指・茶碗・棗などは点前にかかる前に、定めの場所に置きます。この歌は運びの点前の場面を詠んでいると思われます。
まず水指を運び出しますが、水が入った水指には重量感があります。それを重いからと力を入れて持つと、客の目にはいかにも重く見えてしまいますので、軽く持ち上げるようにします。それと逆に、棗や茶碗などを持ちあげるときは、軽いからと両手でひょいと持ちあげると、軽いものがいっそう軽々しく感じられます。軽いものを持つときは、少し重々しく持つのです。
そして道具を置いて手をはなすときは、手をすぐ引くのではなく、ゆっくりと手をはなします。「置く手重かれ」とは、そのことを指します。
2016年6月