濃茶には点前をすてて一筋に 服の加減と息をちらすな
この歌は、濃茶のときは点前の上手下手にこだわらずに、いかにお客さまにおいしく濃茶を召し上がっていただけるか、服加減に専念しなさいという教えです。
これは手先のみでお茶を練るのではなく、心でお茶を練るということ、とにかく一心不乱に、誠心誠意をもってお茶を練るということだと思います。
また、「息をちらすな」という教えは、自然体の呼吸法のことを示していて、心身が平常なる様、つまり、呼吸を整えるということだといえます。
茶事において、実際に濃茶を差し上げるためにお客さまを呼んでいます。そのため、ご案内では食事を差し上げるとは書かずに「御茶一服差し上げます」と書きます。御茶一服差し上げたいからどうぞお越しいただきたい。そして、空腹にお茶を差し上げて体にさわってはいけない、ということで、懐石があるのです。これらのことから考えても、濃茶をいかにおいしく差し上げるかということが、非常に大事なのだといえます。
2020年9月