2. 棗(なつめ)について
棗 というと茶道に携わる方なら「抹茶を入れる茶器」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。棗の名前は今回取り上げる果実 棗のころりとした丸みを帯びた形に似ているところから名がつけられています。
「一日食三棗 終生不顕老(一日に三粒の棗を食べることで老いは現れることはない)」という言葉もあり、かの世界三大美女と謳われた楊貴妃も好んで食べていた棗。滋養や美容成分に富んでいることが古より伝わっています。
日本にも奈良時代には薬として中国から渡来したそうです。
ちなみにこちらブラジルでもよく見かける茶色い楕円形のナツメヤシ=デーツは棗とは植物の種類が違う別の果物です。デーツも滋養豊富 中東のイスラム諸国では貴重な栄養源として、または滋味あふれる甘味として広く愛されています。
【効能について】
棗は実を乾燥させて生薬「大棗(たいそう)」として用いられます。東洋薬学の世界では「大棗を使わない漢方医はいない」といわれるほどの効果を発揮しています。
体を温める温性に属し、冷え性改善の強い味方であり風邪薬の葛根湯にも使われています。
また五臓(肝 心 脾 肺 腎)においての脾を助ける働きがあり、食物の消化吸収の促進が期待できます。
血を補い精神を安定させる「養血安神」という効果もあるので貧血防止やストレスの軽減または安眠にも大変役立ちます。
更には鉄分をはじめ、食物繊維 抗酸化作用のあるポリフェノールも豊富に含まれており、女性にとってうれしい効能がたくさんあるのも特徴的です。
【食品として】
薬膳料理の世界ではスープと共に乾燥した棗を煮込み、栄養分はもちろん甘味のアクセントとして使われています。韓国では参鶏湯(鳥のおなかの中に朝鮮人参やもち米を詰めて煮る伝統料理)にも欠かせない食材の一つとして用いられています。
棗はお茶請けとして中国茶の本場 中国そして台湾でも親しまれています。
乾燥した棗を半分に割りクルミを詰めたお菓子がよく知られ、棗のしっかりした甘さとクルミの香ばしさがいろんなお茶と相性がよいのでしょう。
茶の湯の席でもお菓子としてお出ししてもお客様に喜んでいただけそうですね。
なお一日食三棗 は適量だそうで、おいしさのあまり多く口にしてしまうと糖分過多になりますのでお気を付けください。
2022年6月