~ 一盌からピースフルネスを ~

5. 梅(うめ)について

今回は我々になじみ深い梅を取り上げてみます。梅は日本で古くから親しまれてきた果物の一つです。梅の花に関しても春真っ先に開くおめでたい花として(「百花の魁(さきがけ)」ともいわれます)、その高潔な花の姿や香りがいにしえより愛でられ、万葉集の時代から和歌にも詠まれています。

 

【効能について】

五行説の「寒性・涼性・平性・温性・熱性」の五性(食べ物の性質)で梅の実は平性に属し、熱しすぎず冷やしすぎずといった穏やかな作用をもたらします。

五味(味の特性)「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(かん味)」のうち酸味にあたる梅の実。体内の血液以外の水分を整える役割を果たしており、汗のかき過ぎを抑えたりのどの渇きを潤したり、下痢の症状を和らげたりします。栄養の消化吸収を助ける働きもあり、夏バテや体の疲れにも効果的です。

また、梅はアルカリ性食品ですので血液やリンパの流れを良くし、抵抗力や抗菌力向上につながります。

 

【食品として】

梅干し
梅といえば梅干しを思いつく方が多いのではないでしょうか。
熟した梅を塩に漬けた梅干しには上記の効能に解毒作用が加わります。食中毒予防にもなるので、お弁当やおにぎりに梅干しを用いるのは古来から伝わる知恵といえるでしょう。鎌倉時代のあたりから梅干しは重宝されており、戦国時代には保存食や傷口の消毒にも使われたそうです。
日本人にとってのソウルフードと言えます。


梅の実は梅干し以外にも様々な使い方があります。代表的なものは梅酒やシロップ、ジャム等が挙げられます。未熟な青梅は中毒性物質を含むので、アルコールや砂糖に漬けたり加熱したりして、生食は避けましょう。

出典:農林水産省『aff』2020年2月号
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2002/spe2_02.html

茶席でも供される梅を主題にしたお菓子は種類も多く、早春には梅の花をかたどった菓子が、初夏の頃には青梅を模したお菓子が四季の移ろいを感じさせてくれます。特に梅の花と雪をモチーフとした上生菓子は何とも華麗な趣がありますね。
なお、お菓子やスイーツでも梅味は根強い人気があり、梅味の飴やスナック菓子のフレーバーなども日本ではおなじみになっています。

 

「梅はその日の難逃れ」という諺があります。朝出かける前に梅干しを食べるとその日の難を逃れられるという意味です。

梅干しの効能が体調を整えて、健やかに1日を過ごすことができるということなのでしょう。       
美味しい梅を頂いて毎日元気に暮らして参りましょう。

2023年2月