8. さつまいもについて
ほくほくした甘味が大人気のさつまいも。
原産地はメキシコ中央部からグアテマラにかける地域で、やがてペルーに伝わったといわれています。こちら南米・ブラジルでもなじみのある食材のひとつでしょう。今回はさつまいもについて取り上げます。
さつまいもは15世紀の大航海時代にスペイン人やポルトガル人によって、南米大陸から東南アジア・中国にもたらされ、日本には17世紀初めには琉球から薩摩へと伝来されました。「薩摩の芋」すなわちさつまいもと呼ばれる所以です。
【効能について】
五味(味の特性)「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(かん味)」では甘味に属します。脾臓を整える働きがあり、疲労回復または食欲不振に役立ちます。五行説の「寒性・涼性・平性・温性・熱性」の五性(食べ物の性質)でさつまいもは平性、身体の寒熱のバランスを整えてくれます。お子さんからお年寄りまで安心して召し上がることができます。
さつまいもの効用は何といっても豊富な繊維質でしょう。体内の余分な水分を輩出してくれるので便秘の改善からむくみ対策に役立ちます。大腸がんの予防や、糖尿病や高血圧などの成人病の改善にも有効です。
またビタミンB1、B2、Cが多く含まれているのも特徴です。ビタミンB2は脂肪燃焼の手助けをします。
さつまいものビタミンCはレモンやリンゴより多く含まれ、美肌効果も期待できます。
さつまいもの皮の部分も栄養を多く含むので、きれいに洗って皮ごと食べる事をお勧めします。
【食品として】
色々な調理法で楽しむことができるさつまいも。芋の部分以外にも葉や茎も食べられ、炒め物やつくだ煮、てんぷらの具材にも使われます。
さつまいもは60~70℃ほどでじっくり加熱すると甘味がさらに増します。石焼き芋はさつまいもの甘さを味わうのにもっとも適しています。日本と同じく薬膳の本場・中国でも秋から冬にかけて街角に石焼き芋屋さんが現れるのですが、あの食欲を誘う香ばしい匂いが秋の到来を思い起こさせてくれます。
大学芋や芋けんぴなども素朴なおやつとして今も根強い人気があります。
スィートポテトやさつまいものモンブランといった洋菓子もお馴染みになりました。
茶席で供されるお菓子として、芋きんつばやきんとん、芋ようかんはいかがでしょうか。いずれもさつまいもの甘さを充分に活かしたお菓子です。
食用以外でも芋焼酎の原料として鹿児島県や宮崎県などでさつまいもはつかわれています。2000年代に起こった焼酎ブームではさつまいもの供給が間に合わなくなったそうです。
環境改善の観点でもさつまいもはバイオエタノールの原料として現在も研究が進められています。
さつまいもの旬は秋から冬ですが、1年を通して手に入る身近な食材です。
食養生の観点からも日常から積極的に取り入れてみるのもよいでしょう。さつまいものやさしい甘みをお楽しみください。
2023年11月