アブダビ便り
「アラブの香り」
2011年に日本を離れ、中東のアラブ首長国連邦(UAE)の裏千家アブダビ茶道教室で茶道を学んだ後、裏千家ブラジルでお世話になり、今年3月に6年ぶりに日本に戻ってまいりました。
初めて足を踏み入れたイスラムの世界ですが、アブダビ人は皆やさしく、また、人間関係を極めて大事にする人々ゆえ、アブダビ人と一緒の茶道教室は楽しく貴重な経験でした。
アブダビでの生活を通じ、大変興味を持ったことの一つがアラブのお香です。
お香の種類
お香はバフール(Bakhoor)と呼ばれ、香油に漬けられたウッドチップが主流で(写真①)、また、練香のようにしっとりとしており丸くこねられたもの(写真②)もあります。
香りは、アガーウッド(沈香)、キャラウェイ、カルダモン、プチグレインなど中東を感じさせるものの他に、ムスク、アンバー、フローラル系、など様々です。
日本でも人気のあるフランキンセンス(乳香、写真③)は、質の良いものが隣国オマーンから入手できます。
香水屋さんでは、お店の方がバフールを焚いてくれて自分の好みの香りを選ぶことができます。バフールは容器を開けただけで強い香りを放ち、焚くとまた違った香りが浮きでてきます。
また、煙の立ち方は、モクモクと勢いよく広く立ち上がるものもあれば、天井に向かって真っすぐに細い煙が立ち上がるものもあります。
バフールの楽しみ方
バフールは、いろいろな形と素材があるMabkhara(マブカラ、写真④⑤⑥)という香炉を使って、チャコール(炭)の上で焚きます。
バフールが熱せられると煙が立ち部屋中香りが漂い、また、女性は衣服に焚きこむこともあります。
生活の中でのお香
アラブでは、香りをとても大切にし、それは生活そのものに密着しているのです。
アブダビ人は男性も女性も素敵な民族衣装に必ずといっていいほど香水をつけています。
また、アブダビ人の天井が高い広く立派な家ではお香を焚いており、家に招かれますと、その家独自の香りで迎えてくれます。これはいわゆるルームフレグランスですが、お部屋の消臭だけでなく部屋を清め神聖な空間を創る目的もあるようです。
イスラム教ゆえ男性と女性が別々の会場で行う結婚披露宴でも、女性の会場ではお香を焚いて、その香りをゲストに楽しんでもらうためにスタッフが香炉を持って各テーブルを回りますし、友人や大切な方へのプレゼントもオイル香水やお香がよく使われます。
私もアブダビ在住中は、毎日朝食前とゲストのある時には、必ずお香を焚き、好みの香りが部屋中に立ちこめ浄化され、清々しい気持ちになったものです。アラブのお香は独特の強く甘い香りが多いですが、日本人にも受け入れやすい優しい香りもありますので、どうぞお試しください。
福岡紀与
2017年9月