~ 一盌からピースフルネスを ~

日本便りー根津美術館を訪ねてー

「燕子花に魅せられて」

 私の自宅からほど近い東京都心の青山にありますこの私設美術館は毎年今の時期に国宝である尾形光琳の燕子花図屏風が公開され、庭園内には美しい燕子花が見事に咲いております。

燕子花屏風図                         燕子花

 都心にあるのにかかわらず大変静かな佇まいを残した日本庭園で自然の傾斜を生かし水が流れ庭内には名だたる茶室が四棟あります。
 優しい陽の光を受けた青々とした楓の数々、池に渡された橋、川縁の屋形船、中でも展示中の光琳の作品と重なる燕子花の群は日本情緒溢れる美しい風景の一つではないでしょうか。
 燕子花の名前の由来は昔、花を使い布を染めるのにカキツバタは良い色が出ることで『書き付け花』と呼ばれたのが訛ったとされています。また、花の形が幸せを運んでくれるツバメの様子に似ていることから『燕子花』と書かれたものと言われております。

庭園の様子

 燕子花について詠まれている和歌があります。
 『住吉の浅沢小野の かきつはた 衣に摺りつけ着む日知らずも』
 恋い焦がれながら、なかなか訪れない好きな人を待つ女性の気持ちを燕子花に思いを馳せている歌です。時代を超越し詠み人の思いがしみじみと感じられます。
 訪れる度に心穏やかにしてくれる美術館。中でも今の季節を心待ちにお庭を散策しのんびりと美術鑑賞が出来るのは何よりの楽しみの一つです。

2018年6月 金子慶子

 

◯根津美術館
実業家、初代根津嘉一郎氏(1860-1940)が日本の、東洋の美術品をコレクションし展示するために作られた美術館。現在の本館は建築家 隈研吾氏の設計で2009年に建てられました。

根津美術館

◯披錦斎
お茶席が設けられており気軽にお菓子とお薄を一服できます。

茶室「披錦斎」                                   茶室からの眺め

〇主菓子
顔佳草(かおよぐさ)[燕子花の別名]

主菓子「顔佳草(かおよぐさ)」

2018年6月