花びら餅
時節を感じさせるお菓子は色々ありますが、新年を祝う「花びら餅」は正月にだけ出会える吉祥の和菓子として知られています。「菱葩餅(ひしはなびらもち)」とも呼ばれ、蜜漬けごぼう・白味噌餡・赤く染めた菱餅を、丸く伸した白餅または求肥で半月型に包みます。
一風変わったこの和菓子の由来は、長寿を願って硬いものを食べる平安時代の新年行事「歯固めの儀式」にあると言われています。白い丸餅に紅色の菱餅を置き、猪肉、大根、押し鮎などを載せて食べるこの風習が段々と簡略化され、餅の中に食品を包んだ「宮中雑煮」となり、さらにごぼうを鮎に、餅と白味噌餡を雑煮に見立てたこの「花びら餅」の形になったとか。明治時代に裏千家十一代家元玄々斎が初釜(年始めの茶会)で使うことを許可されてから、新年の和菓子として広まっていきました。
薄紅色がほんのりと透けた白くやわらかな生地には、どこか気品が感じられます。ごぼう・白味噌餡の塩気と餅・求肥の甘さが程よく調和し、ごぼうの歯ごたえも良いアクセントに。晴れやかに新しい年を迎える喜びを、この由緒ある和菓子と共に噛みしめます。
2018年12月