水羊羹・葛饅頭
日本では梅雨が明け、いよいよ夏らしくなってくる頃。茶道具や着物も夏仕様になりますが、和菓子も夏らしいものが出てきます。
その一つが「水羊羹」。羊羹は小豆などの餡を型に流し込み寒天で固めたもので、通常の羊羹よりも寒天が少なく水分の多いものを「水羊羹」と言います。
口に入れるとすっと溶けるようにのどごし爽やかで、表面はつるりとみずみずしく目にも涼やかです。口どけはなめらか、甘さ控えめで、小豆の風味がふわっと広がります。今では夏の涼菓として親しまれている水羊羹ですが、かつては正月のおせち料理の一つとして冬に作られていたとか。
くず粉を用いて作った透明の生地で餡を包む「葛饅頭(水仙饅頭)」も夏の和菓子として有名です。
こちらも、水を思わせる透き通った質感が見た目に涼しく、つるりとした生地となめらかな餡は良い口当たり。中の餡をいろいろな色に染め、葛生地に透ける色を楽しむこともでき、餡を淡い黄緑色や薄紅色に染めたものは「水牡丹」などと呼ばれます。ちなみに葛は冷やすと固くなるため、常温で食べるのが良いとのこと。それ自体の冷たさを味わうというよりも、涼しさを演出する感性が込められています。
こっくりとした甘さで少し重たい印象のある和菓子ですが、材料や製法はもちろん、口どけや見た目にも工夫を凝らし、夏でも楽しめるものがたくさんあります。あっさりとしてのどごしが良く、その姿や風情からも涼を感じ取れるこれらの和菓子は、蒸し暑い日本の夏にぴったりです。
2017年7月