19. もののあはれ(もののあわれ)
「もののあはれ」とは、どう意味なのだろうか?
これは、現代語でいう「物」、すなわち「物質」を意味するものではない。古代の日本人は、目に見えないもの、霊的な存在の物事の総体を「もの」と呼んでいた。「モノノケ」「物思い」は、そうした意味も強く残した言葉である。「もののあはれ」の「もの」は、自然界や人の世にまつわる物事のすべてを指していると理解すればいいだろう。
「あわれ」という言葉は、さまざまなことに触れ、深く感じる情緒、即ち、喜び、おかしみ、哀しみを含めた豊かな情感のすべてを表している。
もののあわれ(もののあはれ、物の哀れ)は平安時代の王朝文学を知る上で重要な文学的・美的理念の一つであり、折に触れ、目に見、耳に聞く物事に触発されて生じうる、しみじみとした情緒や、無常観的な哀愁である。
江戸時代の国学者、本居宣長はその著作『紫文要領』や『源氏物語玉の小櫛』(たまのおぐし)、『古事記伝』などにおいてこの理念を提唱し、日本文学の頂点にあると言っても過言ではない、『源氏物語』は「もののあはれ」が基調となって展開されていく物語であるという。
この『源氏物語』は、1008年、紫式部によって書かれた平安時代に成立した長編物語で、総計54帖にものぼる。当時の貴族社会を舞台とした、たぐいまれなる美貌の貴公子、光源氏を主人公とした恋愛模様、雅やかな遊興、権力闘争、栄光と没落などが描かれている。
この長編小説は、三部構成となっており、第一部は『桐壺~藤裏葉』(きりつぼ~ふじのうらば)まで。第二部は、『若紫上から幻』(わかむらさき~まぼろし)。第三部は、「匂宮~夢浮橋」(においのみや~ゆめのうきはし)までとなっており、現代でも読み継がれている、壮大な一大ロマン長編小説である。
「源氏物語」は、絵画をはじめ、多くの日本文化に影響を与え、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、田辺聖子 角田光代 林真理子などの多くの著名な作家の現代語訳が出版されている。
又わかりやすい漫画などなどもあり、「もののあはれ」知るには、この『源氏物語』を熟読することをお薦めする。
2023年6月