畳(一)
和室と聞いてまず思い浮かべるのは「畳」ではないでしょうか。畳とは和室に利用される日本固有の伝統的な床材です。和室には欠かせない畳について、2回にわたり解説いたします。
畳はもともと莚(ムシロ)・茣蓙(ゴザ)・菰(コモ)などの薄い敷物の総称で、これらを数枚積み重ねて就寝時などに用いたと言われています。使用しないときは畳んで1箇所にまとめて置いたことから、動詞である“たたむ”が名詞化して“たたみ”になったのが畳の語源とされています。古事記の中に「薦畳」「皮畳」「絹畳」などの言葉が記されており、奈良時代(710年~794年)には既に存在していたと考えられています。そして平安時代(794年~ 1185年)には、現在のような厚みを加えられた畳が出現していたようです。その頃は貴族や時の権力者の座具や寝具として板の間の一部に敷く「置き畳」でした。畳を部屋中に敷き詰めるようになったのは書院造りの建築が普及した鎌倉時代(1185年~1333年)以降に京間が現れたとされています。その後、桃山時代から江戸時代(1600年ごろ)に至るなかで数寄屋造りや茶道が発展するとともに畳も普及し、徐々に町人の家にも敷かれるようになりました。
●畳の構造
畳の心材となる畳床(たたみどこ)の素材は稲ワラで、タテヨコに何層ものワラを重ねて積み上げ、40㎝の高さのものを5㎝にまで圧縮します。畳床は畳のよしあしを左右する重要な部分で、保湿性や弾力性、吸音効果など畳の機能面で大事な働きをしています。そしてい草を横糸、麻の糸を縦糸にして織られた畳表をかぶせます。等級はい草の種類によって分類されます。使われるい草の量は畳1畳で大体4~5千本でさらに高級な畳になると7千本のい草が使用されます。
縁の長辺には畳表を止める為と装飾を兼ねて、畳縁(たたみべり)と呼ばれる帯状の布を縫い付けます。一部には縁の無い畳もあります。畳が貴人のみに用いられた平安時代には,その身分によって使用する生地や色が決められていたそうです。
●畳の大きさ
畳の縦横比率は2対1が基本ですが、地域によって様々な規格が存在します。京都をはじめ関西方面では京間(本間)で一番大きく1910×955mm。次に愛知県や岐阜県、北陸地方や東北地方の一部で使われている中京間(ちゅうきょうま)は1820×910mm。東京などの関東地方やその他地域で江戸間(えどま)は1760×880mmと少し小さめです。マンションなどで使われる団地間は1700×850mm。以上の4種類が有名です。
江戸時代になると、一般の商家や農家でも畳が使われるようになりました。この時期から関西と関東の畳に差が生まれることになります。その原因は建築方法の違い。京都を中心とする現在の近畿地方では、畳のサイズを元に柱を設置し部屋の大きさを決めていく畳割(たたみわり)という設計方法が一般的でした。しかし、江戸時代になると、柱と柱の間の長さに、畳のサイズを合わせる柱割(はしらわり)という方法が採用されるようになりました。これにより、『江戸間』は柱の太さの分だけ小さい畳になりました。その結果、古くからの建物が多い関西では『京間』が使われる一方、関東や東北では新しい設計方法の建物が多いため、江戸時代以降に普及した少し小さめの『江戸間』が主流になったといわれています。茶の湯では京間の畳が基準となっています。
参照:『い草・シュロ』についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
2018年8月