10. 焼く・焼物
白身魚はサラダ油を塗って焼く
焼き魚の美味しい時期である。さんまは漁獲量が例年に比べ少ないと報道されると尚更欲しくなるのが炭火焼である。
料理店では、魚を焼くときは、串をさして専用の焼き床で焼くので、焼き魚の原則である「強火の遠火」が可能である。だが家庭では焼き網にのせて焼くことが多い。ガス台に網を置いて焼くなら、ごとくやれんがなどである程度高さを調節することもできるが、ガス台にセットされているグリルで焼く場合には、それも無理である。強火にすれば焦げてしまうし、逆に火を弱めたら水分や脂肪が必要以上に抜けて、パサパサしたまずい焼き魚になってしまったりする。
特に、水分の少ない白身魚はなかなか焼き色が付きにくく、家庭のガス火で香ばしく、かつしっとりと焼くのは難しい。表面にサラダ油を刷毛で薄く塗っておき、塩はそのあと振る。こうしておくと、塩もしっかり止まって香ばしさが出るし、火の通りも早くなって焼き色もよく付く。又、水分も抜けにくい。
さらに網焼きでの失敗は、網に身がくっついたり、焼いているうちに身が崩れたりして見た目が悪くなること。それを防ぐには、網を充分熱しておくこと。熱くなったところに魚を置くと、網に触れたところが瞬間的に固まって、網に身がくっつかない。
塩は背の青い魚は前もって、白身魚は焼く直前に振る
魚を塩焼きにするときの原則は、焼く直前に塩をすること。塩焼きにする魚は鮮度がよいものと決まっているのだから、あらかじめ塩をして臭みを取っておく必要はないのである。特に白身魚は塩をしてしばらく置いておくと、身が締まりすぎて硬くなってしまうので、必ず焼く直前に塩をする。また、鮎ややまめなど小さくて比較的水分の少ない川魚や、いか、えび、貝類は、塩の回りが早いので、焼く直前に塩をする。特に、いか、えび、貝は、早くから塩をしておくと、水分が抜けて焼き上がりが硬くなってしまう。
ただし、例外がある。
まず、さばやさんまなど背の青い魚はあらかじめ塩をしておく。これらの魚は生臭みが強いので、前もって塩をして水分を抜き、生臭みを取る必要がある。
また、ぶりなどのように脂肪の多い魚や、ますのように水分が多い魚は、塩の回りが遅いので、ながいこと塩をしておく必要は無い。
あらかじめといっても、どのくらい前が適当だろうか。たとえばさばなら1時間前、さんまだとそれよりやや短めで40分から1時間程度。ぶりでも脂気の多い腹身の場合は1時間30分ほど必要だが、背身は脂気が少ないので1時間。このように、およそ1時間程度を目安にして、脂気の多いものはそれより長く、あるいは身が薄いものは短くと、調節すればよい。
また、あらかじめ塩をしておく場合は、季節によっても振り方が違う。夏は冬に比べて気温が高いぶん、塩の回りが早いため、塩を振ったあと長くおかない。塩の量も冬より少なめにする。
2017年1月