~ 一盌からピースフルネスを ~

11. 焼く・焼き物

 魚の焼き方も魚によって違いがあり 今年は6回に分けて取り上げます。

 

魚は盛りつけて上になるほうから焼く

 魚を焼くときは「表から焼く」といわれる。表とは盛りつけたとき上になる面のこと。これは姿で焼くときも切り身で焼くときも同じである。なぜ表から焼くのか。これは下火から焼く場合に限って言える事で両面焼きの焼き器の場合は必ずしも当てはまらない。
 それでは魚はどちらを表に盛りつけるのか。姿焼きの魚の盛りつけは、頭が向かって左に、腹が手前にくるようにする。ただ、かれいだけは、頭を左に、黒い表身を上にして盛りつけると、腹は向こう側にくる。また、化粧包丁といって、表面に切り込みを入れておく。これは焼く場合だけでなく、煮たり揚げたりするときも同様である。
 魚は焼くと皮や身が縮むが、鮮度のよいものほど縮みは激しく、身が崩れやすい。皮に切り込みを入れて余裕を作っておくことによって、皮がはじけて所かまわず破れるのを防ぎ、それとともに切り目から余分な水分や脂が抜けるという効果もあるのである。

 切り身の魚はどうか。皮目のほうが色のコントラストが出るので、皮目を上にするのが普通である。また皮が表に出ていると、何の魚かわかりやすいということもある。切り身が小さい場合は化粧包丁をする必要はない。

 ところで、盛りつけ方と焼き方に例外がある。それは鰻やあなご、はもで、身を上にして盛ることが多い。これらの魚は皮が厚く、皮目に火をよく通さなければならないため、皮が破れたり黒い焼き焦げが付いたりして見栄えが悪くなっている。そこで、盛りつけるときは身を上にするのである。これらの焼き方は、皮、身、皮という順序で焼く。まず強火で皮側を焼く、するとたちまち皮が突っ張って、それ以上反らなくなる。その時点で返して、次に身のほう、つまり盛りつけて表になるほうを焼き、適切な焼き目がついて六割がた火が通ったら、もう一度皮側から火を通して焼き上げるのである。

2017年3月