~ 一盌からピースフルネスを ~

18. 煮る・煮物 魚の煮付け

いわしのしょうが煮はまず酢で煮る

 いわしは安価で、栄養価の高い魚である。できるだけ利用したいものだが、新鮮なものでもくせが強いのが特徴である。また脂分や水分が多いため、長時間煮ても味がなかなかしみ込みにくい。

 いわしの煮物といえば、くせを抑えるためにしょうが煮にするのが代表的だが、これをさらに食べやすくする方法がある。

 それは、煮汁で煮る前に、まず水に酒と酢を加えたもので完全に火が通るまで煮るのである。これはアクを出し切るためで、この煮汁は捨ててしまう。このように下煮をしておくと、いわし独特のくせが取れ、酢の効果で骨まで柔らかくなって、多少大きめのものでも骨ごとたべられる。

 次に新たに酒と水、しょうがを加えて火にかけ、温まれば砂糖やみりんを加え、最後に醤油で味付けをする。合わせた煮汁でさっと煮る煮付けとは違って、このように調味料を順番に加えて煮ていくのは、じっくり味をしみ込ませるため、野菜の煮物のように、ある程度味をしみ込ませたところでいったん火からはずし、冷めるまでしばらくおいてからまた火にかけるようにして繰り返し煮ていくと、よりおいしい。

 なお手順が前後するが、いわしは調理する前に十分水洗いをしておくこと。いわしの臭みはまず水洗いの段階でよくとっておくようにしたい。

 

背の青い魚は梅干しで煮ると風味が生きる

 いわしは又、梅干しで煮てもおいしい。いわしに限らず、あじやさんまなど背の青い魚のくせを取るのに梅干しは効果的である。

 原理的には酢で煮るのと同じであるが、梅干しは酢ほど酸みが強くないため、風味良く仕上がる。最初に梅干しを入れて煮ると、ほどよく酸みが付いてくせが抜ける。さらに、身が締まって荷崩れも防げるし、日持ちもよくなる。

 酢を使うか梅干しを使うかは好みである。一般に、骨まで柔らかくしたい場合は酢を使い、骨まで食べないときや風味を生かしたいときは梅干しを使うようにすればよい。併用してもよいし、風味付けに山椒やしょうがを加えてもよい。

2018年6月