~ 一盌からピースフルネスを ~

20. 煮る・煮物

魚の甘露煮は素焼きにして蒸してから煮る

 小魚や川魚は、甘露煮にしておくと日持ちがし、常備食として便利だし酒の肴にもなる。
 一種の保存食であるから、充分に水分を抜いて、味をよくしみ込ませることが必要である。そのため、煮る前に素焼きをして、さらに蒸すということをしておく。
 素焼きの目的は、水分を抜くとともに香ばしさを付けるため。そのためには、皮にしわが寄るくらいまでよく焼かなければならない。火が強いと水分が抜ける前にこけてしまうので、中火の遠火にして、火加減に気を付けながらじっくり焼く。
 素焼きしたあとは蒸して、余分な脂分を取る。蒸す時間は20分くらい。
この段階で骨まで柔らかくしておくために、途中で霧吹きで酒を何度もかける。
 蒸す代りに、熱い番茶を注ぐという方法もある。素焼きした魚に沸きたての番茶を注いで落とし蓋をし、冷めたら茶を捨てる。番茶も脂分があることによって出てくる渋みを除き、また身を軟らかくする効果がある。

 

甘露煮は弱火で煮ては冷ましを繰り返す

 甘露煮は、酒、砂糖やみりんなどの甘み、醤油を、順番に加え、日にちをかけてじっくり煮ていくもの。
 素焼きして蒸した魚は、まず水と酒と昆布で煮る。ある程度火が通れば甘みを入れてしばらく煮てから、醤油を加え、軽く煮立てたら火を止める。そのまま一日おいて、次の日また火を入れて静かに煮る。本来は炭火でトロトロ煮ていくのがベスト。途中、煮詰まり過ぎれば水か酒を足す。このようにして煮ては冷ましを一週間ほど繰り返すと、料理店で出される甘露煮の味とこくが出る。
 煮るときは落し蓋をする。煮汁が多い時点では木の蓋でもよいが、煮詰まってきたら紙の落とし蓋にしないと魚の表面が乾いてしまう。紙蓋に替えたあとも、その上に木の落とし蓋を重ねておくと、魚と紙蓋がぴったり合わさって、より効果的。煮汁が少なくなって、落とし蓋がきかなくなれば、鍋を傾けて煮汁をかけてやり、煮汁が底にわずかに残るまで煮詰めれば出来上がりである。

※ ブラジルにはランバリという川魚がありますが昆布と干し椎茸を一緒に煮ると臭みもなく美味しいです。 

2018年10月