21. 煮る・煮物
昆布巻き(こぶまき)は煮る前に下ゆでする
にしんやもろこを昆布で巻いて煮る昆布巻は、おせち料理だけでなく、酒の肴やお弁当のおかずにも便利なもの。昆布巻は昆布の味ではなく、昆布の中に巻いた魚のうまみとだしで賞味するものである。したがって使う昆布は、薄くて柔らかいものがよい。
まず昆布を20~30分水で戻して軟らかくする。昆布がある程度軟らかく戻ったら、一個分の大きさに切って魚を巻いていく。このときのこつは、きちっと巻くと煮るにつれて締まり、昆布が膨らむのを防げるので、余裕を持たせてむしろいい加減に巻いていくこと。
これをまずたっぷりの水で下ゆでし、水にさらす。これは昆布のぬめりを除くのが目的。ゆでていくと、ぬめりが浮いてくるので、そのつど取り除いていき、出てこなくなれば引きあげる。沸騰してから20分くらいはかかる。引き上げたあとも、水にさらして表面のぬめりを取ることをわすれないように。このように下ゆでせずにいきなり味を付けて煮ると、昆布のぬめりでドロドロになってしまう。
そのあとだして煮ていくときは、鍋にきっちり詰める。横積みにするより立てて入れるほうがよい。だしが上下に通って味の回りがよく、中までよくしみ込むからである。
まずだしである程度煮てから、砂糖と醤油を順に加えて味を含めていく。みりんは昆布を締めて硬くしてしまうので、使っても少量に。ある程度煮たら火からはずして冷まし、これを繰り返しながら味を含めていくようにする。
豚の角煮はおからで下ゆで
豚肉の油っぽさを抜いて、舌の上でとろりととろけるように仕上げた豚の角煮。料理店にだされるあの光沢と、意外なほどさっぱりした味わいは、家庭でなかなか出せないものの1つである。
角煮に使う豚の三枚肉は、日本料理で最も脂身の多い材料で、この脂身をそのなめらかな舌ざわりだけを生かし、余分な脂肪分を抜くにはテクニックが必要になってくる。
まず、5cmくらいに切った肉をフライパンで焼くが、このとき油を敷かず、豚肉自身から脂を引き出させること。そして、焼いている間に出てくる脂はそのままにせず、どんどん捨てていくこと。次に、焼き色の付いた豚肉は、ザルに取って熱湯をかけ、油抜きすること。このように表面を焼き固めてうまみを閉じ込め、同時に外側の脂分をざっと取るのである。
ところで、このように焼いたり、次に述べるように下ゆでしていくと、肉は最終的に半分くらいの大きさになってしまう。だから、仕上がりの大きさよりご割り増しくらいに切っておくようにする。
さて焼いた豚肉は、次にたっぷりの水でゆでて余分な脂肪分を抜いてしまうのだが、ここでポイントを一つ。それは、ここにおからを加えることである。三枚肉をゆでると脂肪分が水の中に出ていくが、脂は水に溶けないので、長くゆでていくうちに再び肉の中に戻ってしまう。だがおからを入れておくとおからが脂分を吸着してくれるので、その心配がない。また、豚肉独特のにおいも消す働きがある。おからの分量は、4リットルの水に対して500グラムくらい。入れ過ぎるとドロドロになってしまう。ゆでるときにねぎやしょうがを入れておくのもにおい消しのためである。
ゆでていくうちに肉は浮いてくる。串を刺しても肉が沈まずスッと刺せるくらいまで軟らかくゆでるのがこつで、数時間はかかる。常にたっぷり湯をかぶっている状態でゆでるようにし、ゆでている間にゆで汁が少なくなれば湯を足す。ゆで終わったら水に落として冷まし、おからを洗い落とす。そのあとさらに水でさっとゆでると、おからのにおいは完全にとれる。
2018年12月