和食、日本料理について – 小池信也シェフ
2015年1月27日、日伯外交関係樹立120周年・サンパウロ日本国総領事館開設100周年の記念第一弾として、在サンパウロ日本国総領事館公邸に於いて、和食セミナーが開催されました。
大変素晴らしい講演でしたので、ここ裏千家ブラジルのホームページにてご紹介いたします。
大変素晴らしい講演でしたので、ここ裏千家ブラジルのホームページにてご紹介いたします。
日本が誇る文化の象徴として「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されたのは記憶に新しい。
登録された内容は幾つかあるがその代表的なものとして以下にあげると、
- 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
- 栄養バランスに優れた健康的な食生活
- 自然の美しさや季節の移ろい表現
- 正月等の年中行事との密接な係わり
が代表的な表現となる。
また、日本料理と「和食」の意味の差異は、1900年以降に西洋、中国等の異国文化の流入に影響を受け独自の進化を遂げた食文化とそのものを和食と言い、伝統料理を日本料理と呼んでいるように思われる。また、他の理解では、日本料理は高級料理で和食は家庭食も含めた大衆料理の域とも言える。
日本料理の歴史的な背景
伝統文化に育まれた日本料理
日本料理の歴史的な背景には幾つかの説があるがここでは平安時代(宮廷、貴族文化)を起源とし、鎌倉、戦国時代(武士文化)に様式や調理法が進化し現代の日本料理の基礎を築いた。
それ以降様々な時代に試行錯誤が繰り返され、1900年以降外来文化そして、現代では情報交流のスピード感が加速され、伝統を重んじ進化している。
日本料理の基本的な種類
鎌倉時代、戦国時代に千利休が築いた茶の湯や懐石料理の代表的な料理について。
八寸 | ― | 宴の始まりに提供され、酒の肴として提供される。 視覚的に最も刺激される料理。海の幸、野のもの、山の幸を調理し季節感の表現大切にする。 |
造り | ― | 日本が誇る最高の調理法を用い、素材本来の持ち味を切るという調理技術だけで提供される。 勿論、下処理や熟成など素材との向き合いが大きなウエイトを占めている。 |
お椀 | ― | 自然素材から抽出される旨みを主役に、季節の食材をシンプルに調理しながら最高の脇役に仕上げる。 八寸、造りと同等の華やかさがある。 |
焼物 | ― | 季節の魚、肉、野菜を色々な焼くというシンプルな調理法で素材の旨みを提供する。焼くときの火種、温度管理や 時間、材料の下処理に気を配り提供する。 |
揚物 | ― | 油で揚げる料理。全ての日本料理の中でも少しラインが異なる。異文化が流入した頃からポピユラーになった調理法。 |
焚合せ | ― | 煮るという調理法を使った料理。主に野菜の煮物に他の素材の煮物を合わせて提供される。 |
お食事 | ― | 一般的には御飯、汁、漬け物が提供されるが、麺類や寿司等も提供される事がある。 |
「和食」にはその他、家庭料理、異文化を基として独自に進化したすき焼き、カレーライス、とんかつ、焼きそば、ラーメン等が現代日本の代表選手として挙げられる。
将来のブラジルに於ける和食について
- 私がブラジルに渡って今年で20年を経過いたしましたが、この20年はブラジルの和食が非常に高度成長した時期であったことは間違いありません。この20年間様々な業態が生まれ、また、たくさんの和食店が開店し、大量の和食材が輸入されました。情報の流入も加速度化し、多くのブラジル人が日本を知る機会が増えています。そして正しい日本文化の伝承を求めています。
- これこそが更なる飛躍のチャンスなのです。我々は依り正しいたくさん選択肢のある情報を正しく租借し解りやすく実践してみせる必要性があるのです。和食が世界の無形文化遺産に入ったことは非常にすばらしい事です。数百年の歴史を重ねた様々な知恵や嗜好を日本という特異な文化を食を通じ異国の地に伝承させる、なんと壮大な事でしょう。しかし大切な事は全て原点や基本だと思います。今の時代は世界の距離がどんどん縮まっています、国際交流も盛んに行われています。もし、我々が原点や基本を正しく伝えることが出来れば60年代に異星人のように映った日本文化も今の時代では容易に理解して貰えることが出来るのです。そして、日本人の持つ味覚や美意識、仕事に対するこだわり等を継承する人達が生まれる筈です。私はその様な時代が既に訪れつつある事を実感しております。異国に於いて和食を普及させるには日本文化を語らずにしてはあり得ないのです。下地は少しずつ築きつつあります。今後は人材教育を踏まえた国際文化、人材交流によりさらに正しい和食の普及が進行するものと確信しております。ここ数年日本の官民の注目度も高まりやっとブラジルも日の目を見る事が出来るようになったと喜んでおります。
- 2016年のリオのオリンピックも控え更なる品質向上を目指し、安全で美味しく、美しい和食を今後も普及してまいります。
2015年3月