9. 口直しに欠かせない造りのつま
8月号で「造り」を取り上げましたが今回は添える「つま」についてです。
さて、「造り」が出来、盛りつけの時なくてはならないのは「けん」や「つま」です。
盛りつけの皿とともに心を込め工夫を凝らす事の楽しみもある。
けんというのは、つまの一種で野菜を細かく切ったもので、よく使われるのは大根やきゅうり、にんじん、かぼちゃや長いも、ラディッシュ、うどなども用います。 冷蔵庫のない時代には魚に水分を補給して鮮度を保ち、血の気を切るのに用いられたが、今は口の脂落としとしての役割で、盛りつける量も二口程度あればよい。
また必ず添えなくてはならないものでもない。まぐろやぶり、さばといった脂気の強いものはあったほうがよいが、白身の魚やいかなどには長いもを切ったものを添えるぐらいでよい。
けんといっても何でも同じように細く切ればよいというものでもなく、春の大根は薄く細く切るが、みずみずしく柔らかい秋の大根は、やや厚めに歯ごたえよく切ったほうがよい。またきゅうりは大根より軟らかいので、大根より太く切る。にんじんは硬いうえににおいがあり、色合いも強いので、少なめに盛りつける。
切り方によって、「縦けん」と「横けん」がある。繊維に沿って切れば縦けんで、剣のように立てて盛りつける。繊維を断ち切るように横に切れば横けんとなり、下に敷いたり、くるっと巻いて盛りつける。いずれも切ったら数分冷水にさらしてシャキッとさせるが、縦けんに切ったときは水の中でそろえてピンと立たせて盛る。いづれも水につけるとアクが抜け 美味しくなるがつけ過ぎると味が抜ける。
つまは、魚のにおいを消して口をさっぱりさせるとともに、季節に応じて見栄えをよくするためにも使うがさしみは生で食べるので「毒消し効果」がある大葉や芽じそや穂じそ、ワカメ、ミョウガなど一緒に食べて「食あたりを防ぐ」という先人達の知恵と工夫がこらされてもいる。種類は多くけんはなくてもよいが、つまは必ず添えたいものである。
2016年10月